0,ppp,@yun

2018.05.04 Fri
「きのう、ゆんと会った」と夏子が電話してきたのは木曜日のランチタイムでした。

「きのう?私一緒にいたけど」

「聞いてる。まだ始めてないんだって?」

「うん」

「興味うせた?」

「かもしれない」

「無理しなくていいと思うよ? 無理してやるほどのもんじゃないし」

「根拠は?」

「根拠って・・・いあ、ただのゲームなんだし」

「ただのゲーム」

「そ」

「ぬかしてんじゃないわよ!」

「お!?」

「たかがゲーム?そのたかがゲームで心を折ったの、どこの誰なのよ」

「たかがとは言ってない、ただの」

「おなじ!」

「落ち着いてよ、あさちゃん」

「やだね」

「私も悪かったと思ってるって責任感じてるんだ。あんなことがあったから」

「なんのことかわからないんですけど」

「だから本当にゴメンて」

「なんのことかわからないけど、とりあえず許す」

「よかった」

「よくないわ!」

「どっちなのよ、もう」

「このさいだからハッキリ言うわ。戻ってきなさい夏子。そしたら始める」

「え~」

「戻ってきなよ。一緒に遊ぶ約束したじゃない」

「それは確かに、したけどさあ」

「戻ってきて。そしたら始める」

「考えとく」

「なにを?」

「とりあえず、いろいろ」

「いろいろ?」

「いろいろ」

「とりあえず?」

「とりあえず」

「考えてどうするの?」

「決める」

「なにを?」

「・・・いろいろ」

「いろいろねえ」



ごめん私、仕事に戻らないと。そう言って私は電話を切りました。

確かに時間は時間だったけど、仕事は暇でしたからもう少し電話を続ける余裕は、あったんですけど。



夕方、ゆんが店に寄ったので「ね。あのあと夏子と会ったの?」と訊きました。

「ひょっとして聞いた?」

「聞いた」

「そっか。あの子も、しょうがないよねホント」

「うん。ホントしょうがない」

「かなり荒れてたっしょ?」

「いつものことよ」

「昨日はホントすごかったんだから。いきなり、あたしんち来たのよ」

「え、そうなの?」

「早く寝たかったのに朝早いから。今日完全寝不足」

「じゃ、おやすみなさい」

「いあ、まだだけど?」

「むりしなさんな」

「むりしないと、やってけないよ」




この春、ゆんと夏子は大学を卒業したばかり。社会人になったところでした。

私たちの同級生で、大学に進学した人たち。この春から社会人。

私は早くに学校を卒業して、とっくに社会人なんだけど、まわりで社会人になるのを見ていて、

『なんだか引き離されていく感じがするな』と感じていました。




なんとなく、いつかまた学校で会る、そんな気持ちがどこかにあったんだと思います。

あるわけないし学校で会えるわけないのに。

大学の学園祭に呼ばれたことがありましたが、それは別世界チックで学校で会うとのとは感覚的に違うというか。

私の居場所じゃないし、と思い知らされることだらけでしたし。



もう、このまま、どんどん引き離されてしまうんだろうなあ。

そんなふうに、うっすらと思っていました。

ところが。



「で、結局、なっつん、ありゃだめだわね? もう手遅れ」

「いまさら?」

「そ。いまさら。久しぶりに会ったけど、変わってないし」

「変わる必要ないし」

「なっつんは変わった方がいいと思う。あの性格、あのまんまじゃ」

「変わんないわよ。ひとの性格なんて」

「そうかなあ。あさちゃんなんて、ずいぶん変わったじゃん」

「かわんないわ」

「それ。そういうとこ、昔と違うし。見た目は変わんないけど」

「まあ、そのてん、ゆんは見た目、変わったよね?」

「ひとそれぞれ、なのかな?」

「でしょうね。で。夏子なんて言ってたの?」

「ゲーム戻りたい遊びたい、みんなに会いたい! って」

「よかった! じゃあ、みんなて遊べるね」

「そ。遊べる。みんなで。ああ、あ」

「よかったあ」

「よかったけど、いいのかなあ?」

「いいにきまってるじゃない。よし!私も始める」

「あさちゃんが始める気になってくれるのは嬉しい。正直それ大歓迎。ただ、なっつん」

「別にいいんじゃない? トラブルメーカーなんでしょ」

「そ。超トラブルメーカー問題児。なんでゲームの中では、ああなっちゃうかね?」

「そういうもんでしょたぶん」

「そういうもんだと困るんだよねえ。振り回される身にもなってよ」

「私は振り回されないわ」

「だってゲームやってないし」

「やってたって同じよ。ひとは、ひと。私は私」

「そういうとこ正直うらやましい」

「ゆんは親切すぎるのよ。優しくするのは彼氏だけにしなさい」

「そうしたいんだけどね、あたしも」




「コーヒーごちそうさま。美味しかった」

「ありがとうございました」

「だいぶ板についてきたね?」

「ありがとうございます」

「しかし驚いたなあ。クリーニング店、改装して半分カフェだなんて」

「楽しいわよ?」

「バイトしたかったあ」

「私は雇いませんよ?」

「そんなことないでしょ。雇うでしょ。なんで二年早くオープンしてくれないかな」

「いろいろとありましてね?」

「いろいろね」

「うん。いろいろ」

「なっつんも言ってた。いろいろありすぎたって。ありすぎたけどリセットしたいってさ」

「すればいいのに。するのよね?」

「どだろ。本人そう言ってるけど、あの性格だから」

「まだ私、想像つかないのよね。夏子の、その、ゲームの中での」

「それがいい。それでいいと思うよ? あたしなんか、あれ全部夢であってほしいって思うし今でも」

「お疲れさまでした、会長」

「ありがと。そう言ってもらうと救われる」

「これからよろしくお願いしますね、会長!」

「お。そっか」ゆんは突っ伏していたテーブルから頭をあげて言いました、

「本当に始めるんだね?」

「うん。よろしくね」私は言いました「ゆんのギルド、入れてね?」

「もちろん!大歓迎だよ。ていうか早く来てよホント」

「このあと、ログインするわ」

「やった。やった、やっとか。待ちわびたぞお~?」

「待たせたなコジロー」

「あさちゃん、キャラの名前は決めた?」

「うん。まりるだよ」

「…微妙」

「そうなの?」

「もういそう。ていうか、見たことある気がする」

「同姓同名なんて世の中ザラでしょ」

「まあ、いいか。じゃあ、今夜ひょっとして会えるかも?」

「うん。校庭の真ん中だっけ、たまり場」

「そ。まあ、いろんなひとがいるけど、だいたいそこにいる。今夜は必ず」

「よろしくお願いしますね、会長」

「名前はロゼッタだよ」

「ロゼッタ会長、おてやわらかにお願います」

「くるしゅうない!」








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