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ゴールデンウイーク

2018.04.29 Sun
 
ゴールデンウイークですね。

いかがお過ごしです?

私は元気にしています。


オンラインゲームの世界から、

ずいぶん遠くなってしまった感覚があります。


いろいろな記憶が薄れつつも、

どうにも鮮やかに覚えていることもあるものですから、

少し自分の気持ちを整理するために綴ってみようかしらと。


考えました。


こっそりと、また、ここに来ます。




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0,

2018.05.04 Fri
「それで、どうするの?」

「始める」

「じゃあ早くやろうよ」

「うん」

わかってる。

わかってるけど。



始めたくてパソコンも手に入れたし、

インターネットにも繋がりました。

なのに、始めないまま年は明けてしまい、

ついに春も過ぎようと。



「いつまでたっても始めなきゃ始まんないよ~」

「それもそうね?」

「だいたいなんで?始めないのよ。なっつんのこと気にてるの?」

「気にしてるけど関係ないわ」

「気にしてるんだ」

「ゆんは気にしてないの?」

「心配は多少。でもしょうがないじゃん、あの件は」

「うん。しょうがない。だから関係ない」

「じゃあ始めましょ?」

「あと一日考えさせて」

「考えるって、なにを?」

「とりあえず色々と」

「いろいろってなに? とりあえずなら始めようよ」



ゆんは私の部屋で「早く早く」と、その日も急かしていました。





「ダウンロードは完了してるの?」

「インストールも終わってる」

「なら、なんで?」

「だから始めるって言ってるじゃない、しつこいんだから」

「しつこくさせてるの誰!ちっとも始めないからでしょ、あさちゃんが」

「だから始めるってば」



結局その日も始めませんでした。

週末はゴールデンウイーク、そんな水曜日の夜。


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0,ppp,@yun

2018.05.04 Fri
「きのう、ゆんと会った」と夏子が電話してきたのは木曜日のランチタイムでした。

「きのう?私一緒にいたけど」

「聞いてる。まだ始めてないんだって?」

「うん」

「興味うせた?」

「かもしれない」

「無理しなくていいと思うよ? 無理してやるほどのもんじゃないし」

「根拠は?」

「根拠って・・・いあ、ただのゲームなんだし」

「ただのゲーム」

「そ」

「ぬかしてんじゃないわよ!」

「お!?」

「たかがゲーム?そのたかがゲームで心を折ったの、どこの誰なのよ」

「たかがとは言ってない、ただの」

「おなじ!」

「落ち着いてよ、あさちゃん」

「やだね」

「私も悪かったと思ってるって責任感じてるんだ。あんなことがあったから」

「なんのことかわからないんですけど」

「だから本当にゴメンて」

「なんのことかわからないけど、とりあえず許す」

「よかった」

「よくないわ!」

「どっちなのよ、もう」

「このさいだからハッキリ言うわ。戻ってきなさい夏子。そしたら始める」

「え~」

「戻ってきなよ。一緒に遊ぶ約束したじゃない」

「それは確かに、したけどさあ」

「戻ってきて。そしたら始める」

「考えとく」

「なにを?」

「とりあえず、いろいろ」

「いろいろ?」

「いろいろ」

「とりあえず?」

「とりあえず」

「考えてどうするの?」

「決める」

「なにを?」

「・・・いろいろ」

「いろいろねえ」



ごめん私、仕事に戻らないと。そう言って私は電話を切りました。

確かに時間は時間だったけど、仕事は暇でしたからもう少し電話を続ける余裕は、あったんですけど。



夕方、ゆんが店に寄ったので「ね。あのあと夏子と会ったの?」と訊きました。

「ひょっとして聞いた?」

「聞いた」

「そっか。あの子も、しょうがないよねホント」

「うん。ホントしょうがない」

「かなり荒れてたっしょ?」

「いつものことよ」

「昨日はホントすごかったんだから。いきなり、あたしんち来たのよ」

「え、そうなの?」

「早く寝たかったのに朝早いから。今日完全寝不足」

「じゃ、おやすみなさい」

「いあ、まだだけど?」

「むりしなさんな」

「むりしないと、やってけないよ」




この春、ゆんと夏子は大学を卒業したばかり。社会人になったところでした。

私たちの同級生で、大学に進学した人たち。この春から社会人。

私は早くに学校を卒業して、とっくに社会人なんだけど、まわりで社会人になるのを見ていて、

『なんだか引き離されていく感じがするな』と感じていました。




なんとなく、いつかまた学校で会る、そんな気持ちがどこかにあったんだと思います。

あるわけないし学校で会えるわけないのに。

大学の学園祭に呼ばれたことがありましたが、それは別世界チックで学校で会うとのとは感覚的に違うというか。

私の居場所じゃないし、と思い知らされることだらけでしたし。



もう、このまま、どんどん引き離されてしまうんだろうなあ。

そんなふうに、うっすらと思っていました。

ところが。



「で、結局、なっつん、ありゃだめだわね? もう手遅れ」

「いまさら?」

「そ。いまさら。久しぶりに会ったけど、変わってないし」

「変わる必要ないし」

「なっつんは変わった方がいいと思う。あの性格、あのまんまじゃ」

「変わんないわよ。ひとの性格なんて」

「そうかなあ。あさちゃんなんて、ずいぶん変わったじゃん」

「かわんないわ」

「それ。そういうとこ、昔と違うし。見た目は変わんないけど」

「まあ、そのてん、ゆんは見た目、変わったよね?」

「ひとそれぞれ、なのかな?」

「でしょうね。で。夏子なんて言ってたの?」

「ゲーム戻りたい遊びたい、みんなに会いたい! って」

「よかった! じゃあ、みんなて遊べるね」

「そ。遊べる。みんなで。ああ、あ」

「よかったあ」

「よかったけど、いいのかなあ?」

「いいにきまってるじゃない。よし!私も始める」

「あさちゃんが始める気になってくれるのは嬉しい。正直それ大歓迎。ただ、なっつん」

「別にいいんじゃない? トラブルメーカーなんでしょ」

「そ。超トラブルメーカー問題児。なんでゲームの中では、ああなっちゃうかね?」

「そういうもんでしょたぶん」

「そういうもんだと困るんだよねえ。振り回される身にもなってよ」

「私は振り回されないわ」

「だってゲームやってないし」

「やってたって同じよ。ひとは、ひと。私は私」

「そういうとこ正直うらやましい」

「ゆんは親切すぎるのよ。優しくするのは彼氏だけにしなさい」

「そうしたいんだけどね、あたしも」




「コーヒーごちそうさま。美味しかった」

「ありがとうございました」

「だいぶ板についてきたね?」

「ありがとうございます」

「しかし驚いたなあ。クリーニング店、改装して半分カフェだなんて」

「楽しいわよ?」

「バイトしたかったあ」

「私は雇いませんよ?」

「そんなことないでしょ。雇うでしょ。なんで二年早くオープンしてくれないかな」

「いろいろとありましてね?」

「いろいろね」

「うん。いろいろ」

「なっつんも言ってた。いろいろありすぎたって。ありすぎたけどリセットしたいってさ」

「すればいいのに。するのよね?」

「どだろ。本人そう言ってるけど、あの性格だから」

「まだ私、想像つかないのよね。夏子の、その、ゲームの中での」

「それがいい。それでいいと思うよ? あたしなんか、あれ全部夢であってほしいって思うし今でも」

「お疲れさまでした、会長」

「ありがと。そう言ってもらうと救われる」

「これからよろしくお願いしますね、会長!」

「お。そっか」ゆんは突っ伏していたテーブルから頭をあげて言いました、

「本当に始めるんだね?」

「うん。よろしくね」私は言いました「ゆんのギルド、入れてね?」

「もちろん!大歓迎だよ。ていうか早く来てよホント」

「このあと、ログインするわ」

「やった。やった、やっとか。待ちわびたぞお~?」

「待たせたなコジロー」

「あさちゃん、キャラの名前は決めた?」

「うん。まりるだよ」

「…微妙」

「そうなの?」

「もういそう。ていうか、見たことある気がする」

「同姓同名なんて世の中ザラでしょ」

「まあ、いいか。じゃあ、今夜ひょっとして会えるかも?」

「うん。校庭の真ん中だっけ、たまり場」

「そ。まあ、いろんなひとがいるけど、だいたいそこにいる。今夜は必ず」

「よろしくお願いしますね、会長」

「名前はロゼッタだよ」

「ロゼッタ会長、おてやわらかにお願います」

「くるしゅうない!」










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0,ppp,@yun,natsu

2018.05.07 Mon
「なんで?」
「なんでも」
「だから、なんで」
「なんでもないの」
「それじゃわかんないよ」
「わかんなくていいよ」
「やだ」
「って言われてもなあ」


私が部屋に入ると、夏子がベッドに倒れるように転がっていたのですよ。ゆんはパソコンの前。ゲーム画面から音楽が流れているのに、あれれ止まっています。

「ゆん?」と私が声をかけると、
「ああ?ああ。おつかれちゃん」と低いトーンの返事。
夏子は壁の方を向いたまま転がっていますね。

「なにか、あった?」
「まあね。ていうか、よくわかんない」と、ゆんが言うと、
「なにがよくわかんないよばか」と夏子が叫びました。転がったまま。
「しょうがないじゃん」ゆんの右手はマウスを持って、え、あれ、あれれ。
「ゆん。画面、固まってる?」私が訊くと、
「いあ、ちとAFK」
「そう?」
「そう」
ゲーム画面のなかは、ゆんがひとりだけ。
「今日は静かね?」
いつも賑わっているイメージだったので、ぽつんとひとりきりでいるのを見るのは珍しいのですよ。しかも、
「誰も話してない?」チャットが流れていません。
「いあ」
「ゆんのばか!」
「どうしたの夏子」私は転がっている背中に声をかけます。
「こいつさあ!」と夏子は起きあがり私のほう、
「え!?」夏子は涙を流していました「夏子?」
「聞いて。こいつギルド解散しやがったのよ」
私を、じっと見据えながら強い口調で言い放ちました。
「解散?」私は夏子の言葉を繰り返し。
「しかも、いきなり!理由言わないし。なんなのよ!」
ゆんを見ると、じっと画面を見たままです。
いちおう顔を覗き込みましたが泣いてるふうもなく、
むしろ毅然としている感じっていうか。
「なっつんごめん。これしかなかったの」
「ざけんなばか」夏子はベッドから立ち上がり、ゆんの首を絞め始めます。
「なんで、なんで、なんで?」夏子の目から涙が流れているのですが、なんでなのか、ただただ湧き水のように透き通っているなと思ってしまうだけでした。
理由を聞いていいのか、聞かないほうがいいのか、見当もつきません。
「解散。じゃあギルド。なくなっちゃったの?」
ゆんの首を絞めながら夏子は勢いよく連続で頷きました。
「あさちゃん、ごめんね」ゆんが言いました。
「このまま死んじゃえ」夏子は首を絞め続けています。
「あさ、あ、なっつん止めてくれな、いの?」
「う~ん? わかんないけど夏子が怒るの珍しいし、ちゃんと理由あるんじゃないかなあって思って」
「くるし。ぬ。まじ」
「夏子、刑務所行ったらなんにもできなくなるよお?」
「わかってる。わかってる。わかって、けどさあ」
「ねえねえ私いちおう入ることになってたギルドだよね?」
「もうないけどな」夏子が言いました。ゆんも何か言っているような気がしましたが声が出せないようでした。
「理由、聞かせて欲しいんだけどな?」と私が言うと、
ゆんは左手を挙げてバタバタしました。
「いったん、やめようよ?」と夏子に言うと、
「私も。教えて。聞きたいから」と夏子は手を緩め、ゆんに言いました。

経緯は単純。なにやら、もめた。たまり場で。言い合いになった、いつものこと。なのに今夜は許せなくなって?
「ぽちっとしちゃった」ゆんが言いました。
「ぽちじゃねえだろばか」
「ぽちってなに!?」
「あさちゃん、こいつさ。喧嘩の途中ブチ切れちゃって、ギルド解散のボタン押しちゃったのよ。いきなり」
「だめじゃん!それ」
「でしょお? ほら!ゆん、あさちゃんも怒ってんじゃん」
「怒ってるっていうか不思議? 謎っていうか」私は言いました。
ゆんは咳を何度かしてから私が運んできたコーヒーを手に取り、
「まだ熱いかも?」と私が言うより早く飲み始めました。
「先に言ってよ」ゆんは舌を、やられたようでした。


「ごめん。反省してます」ゆんが正座して軽く頭をさげて言うのでした、「勢いとはいえホントごめん」
「コーヒーすっぱいなあこれ?」と夏子が言います。
「わかる? フルーティーでしょ?」
「苦いほうが好きかな。酸味いらないし」
「それ高いのよ?」
「安くても美味いほうがいいの」
「おかわりは深煎りにするね」
「おねがい。て、ゆん!逃げんなよ」
「逃げないってば」
「説明して。いいから」と私も言いました。
「じゃあ、ちょっと巻き戻すから一緒に見て」ゆんはチャットログを巻き戻して話し始めました。

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0,ppp.@ asa

2018.05.14 Mon
ゴールデンウイークがあけると、毎日のように二人が私の店に立ち寄るようになりました。
正直に言うと、それはそれで嬉しかったのですよ。
まるで学生の頃に戻ったようでした。というよりも、学生生活が義務教育までの私にとって、学生気分それも妄想的な学生気分を味わえているような錯覚。
ゆんと夏子が大学生のとき、気兼ねなく会ってはいたものの、すでに働いている私はどこか引け目を感じていました。意味のない引け目でしょうが、事実なので。

大学に進学した同級生たちが、大学を卒業して社会人になる。そんな当たり前のことが、私には決定的な断絶のようにも思えていたのです。
もう私は、学生になることは、ないでしょうし、ゆんと夏子が経験した学生時代には触れることもできないわけです。そんなこと、とっくに知っていたはずなのに、あらためて思い知らされたというか、どうしようもなく「もう戻れないし無理なんだ」と実感していた春だったのです。
です。
けれども、ね。
「やほお! こんばんは~」ゆんが来ました。
「いらっしゃい、ゆんちゃん」と出迎えます「コーヒーがいい?」
「コーヒーがいい!いちばん高いの!割引で!」
「はい。いちばん安いのを高く売りつけますね?」
「それより、それより」ゆんがカウンターで身を乗り出すようにして私に近づき、内緒話のように言うのですよ、
「つ・イ・に! 始めた?」
私は黙って、うなづきます。
他にお客さまは、いらっしゃいませんでしたので、そこまで気を遣う必要なんてなかったのでしょうが、
「きのうログインしたよ」と小声で答えました。
「そっかあ。やったじゃんよ!」
「おおげさね、なんか」
「いやいやいや。待ちに待ったって感じ。なっつんも電話で興奮してたんだよ今朝」
「今朝?」
「ゆううつな月曜の朝、いきなしよ。かかってきて何事と思ったら、まじナニゴトよ! あさちゃんがあって」
「それは、それは?」
「これは確認せねばと今夜ここに来ようと話してたわけ。あー。待ちわびたわ。長かった月曜まじ地獄」
「おかえり」
「ここは天国みたいだね~」
「地獄でも天国でも人間の世界なのでお勘定はいただきますわよ?」
「つけといて!」
「は!?」
初めて言われました。


『つけといて』
ドラマかシネマかノベルの世界なら、と思いますけど。現実の世界でも、いるのね。言う人。聞くの初めてで。

「やだなあ、あさちゃん。蒼ざめないでよ、冗談だって」
冗談。ああ、そうなの。
「驚いた」
「シャレよシャレ。マジに受け取らないでってば」
「つけといて? ほんとに言う人いるのね」
「だからさ~」
ガラス窓の向こうに夏子の姿が見えました、
「あ。夏子」と私が言うと、
「来た?」ゆんが振り返って窓を見ました。ほんとだ、おーい、としゃべりながら手をふり始めます。
「たぶん見えてないと思う」と私が言うと、
「そうかな。見えてるでしょ」

「こんばんは」と夏子が入ってきてカウンターに来るなり、ゆんの頭をチョップしました。
「なになに、いきなり」ゆんが驚くと、
「なんでも。ごきげんそうね、会長」と夏子が言います。
「いや私は、もう」
「知ってるわよ! 嫌味で言ってるの」
「あさちゃん、こいつさあ、ずっとこんな感じなの。なんか言ってやって」
「はい。ゆんが悪いわ」
「はあ!?」
「だって原因を作ったの、ゆんなんでしょ?」
そうそうそう、そうそう、と夏子がうなづいています。
「夏子は紅茶のほうが好きだっけ?」
「ううん。コーヒーいただくわ。あさちゃんのオススメで」
「かしこまりました」
「なんでふたりして、いじめるかな」
「いじめてなんかないわよ」と夏子が答えます、「ただ事実と現実を言ってるだけのことですから」
「ちくちくするよ~」
「でも、よかったじゃない。ゆん」と私が話に入ります。
「よくない。それ、いやみ~」と、ゆんが言いましたが、
「さっき夏子は、ゆんのこと『会長』って呼んだよ?」
「それもいやみ~」
夏子はメニューを手に取って眺めながら黙っています。
「はじめ私も、そう思ったけど。夏子が言ったじゃない、事実と現実だって」
「だからなに? それが、いやみじゃん」と、ゆんは夏子の脇をつつきます。やめてよと小声で夏子。
「ゆんが会長。いまでも。それが現実。ってことなんじゃないかしら。ね?」と私が夏子に言うと、
「許せないけどね。でも、なんかね。わからなくもないっていうか仕方ないっていうか」
「なっつん?」
「あれからログインしてないんでしょ?」と夏子が言います「誰に聞いても来てないって言うから」
「とうぜんよ。行けるわけないじゃない、あんなことして」
「自覚あるのね」
「自覚もなにも。わるいことしちゃったなって」
「またゼロから始めましょ」と夏子は言いながら私のほうを見ました「それに」メニューを元の場所に戻し「あさちゃんも始めたんだし」
うん。そう。そうだった。よね? と、ゆんが言いながら、
「なっつん、ホントごめん。他のみんなにも、ちゃんと謝る」
「うん。そうしてね?」
「うん。あわせる顔なんてないけど、みんなに会いたい」
「それなら大丈夫よ心配ないわ。メンバーほとんど怒ってないから」
「そう、なの?」
「うん。怒ってるのは私くらい」
「ごめん! なっつん」
ゆんの頭を見たあと、夏子は私に、
「ねえ。聞かせて。どんなだったの?」
「ゲーム?」と私が訊き返します。
「うん」
「それ。気になる。教えて教えて」
「無事にログインできました」
うんうん。それでそれで。と、ゆん。夏子はバッグから手帳を取り出して、なにか確認し始めました。
「入学おめでとう~!みたいな?」
「うんうん」
「あなたの名前を教えてくれる? みたいな」
「うんうん。それでそれで」
「木刀いただきました!」
「やったあ!まじ、はじめたんだね」
「おまたせしました」
「これでやっとみんなで一緒に遊べるね。よかったよかった」
「よろしくお願いします。ね」
「よかった。ほんっとうに、よかった。なっつんもありがとう、教えてくれて。あと、その、えと、
許して?くれて」
夏子は手帳を閉じて、ゆんと私を交互に見ます。首だけ上下に、うなづきつづける仕草で。
「ギルドのメンバーに、ちゃんと謝るから。そしたら、みんなでギルド新しく作って一緒に遊ぼう。あさちゃんも一緒に」
「はい。よろしくね。いろいろ教えてもらわないといけないけどね」
「なんだって教えるし、なんでも聞いて。みんな親切だから初心者とか気にしないでいいからね」
「ありがとう」
「あのう、おふたりさん」夏子が言います「楽しそうに盛りあがってるとこ大変に申し訳ないのですが」
「あ」ゆんが言います「なっつん、ごめん。つい調子に乗っちゃって。ギルドの会長は他の誰かでいいからね?」
「それはまた別の話、いまは気にしてません」
「そうなの?」
「あれ夏子ちょっと不機嫌?」
「不機嫌もなにも」夏子は話し始めました「わかってないようだからハッキリ言います。私たち、みんなで一緒には遊べないから!」


から~んカウベル鳴って条件反射、
「いらっしゃいませ」と私。
お客さまがいらっしゃいました。ゆんと夏子と三人だけの会話は、いったん中断になりました。


気がつけば二時間以上が経過していて、そろそろ店じまい準備のラストオーダータイム。ふたたび店内は、三人だけになりました。

「長居しちゃったね。迷惑じゃなかった?」と夏子が言いました。
「なんだか、あっというまだった。楽しかったね?」ゆんが言います。
「ええ、まあ」私は答えました。
会えて嬉しいのは本当ですし、一緒に話している時間は楽しかった。のですが。
少し混雑してからは仕事の対応が多くて、カウンターでは互いに目と目を合わせてはポーズをとったり、目くばせしたりするくらいでした。なんとなく、いろいろ。いろいろ聞きたいし話したいし確認したいなって思いながらも、言葉にできないまま時間だけが経過していました。


「あさちゃんラストオーダー終わっちゃったけど、なにか飲み物いただけない?」
夏子が最初に沈黙を破ります。
「アイスコーヒー作り置きなら」
「お願いします」
「あ。同じの」ゆんが言いました。


「やっぱり気づいてないみたいですね?」
夏子が話し始めました。
「責めるつもりは、ないです。まったく。
 そもそも? 
 リアルでもゲームでも、
 トラブルメーカーなのは、いつも私。
 なので謝らなきゃいけないの、むしろ私」
「そんなに気にしなくても」と私が言うと、
「あさちゃん!」と夏子が声を大きく言いました。

ゆんは黙ってアイスコーヒーを飲んだり、置いたり、また手に持ったりしています。

深い吐息のようでした。
夏子の態度に「ためいき、しあわせ逃げてくよ~」と、ゆんが言います。
「ご心配どうも」そのまま話を打ち切ってしまう夏子でした。


「そろそろ帰ろうかな」と、ゆんが言います、「また寄るね」
「今日は、ありがとうございました。またいつでも」
そう私が言うと、
「まあ簡単に済ませましょ、話」と夏子が言いました。

ゆんと私は顔を見合わせます。
「あるんだ、まだ。話」と、ゆん。
私はカウンターの中での片付けが済んだので、エプロンを外します。カウンターの端、椅子を出して座りました。
「ええ。言っておかないといけない話が。たぶん私にしか言えない話みたいだし」
「言って」と、ゆん。
私は黙って夏子を見ます。

「ねえ、あさちゃん。ゲームいよいよ始めたのよね?」
夏子に質問されて「はい」と答えます。
「もうログインして、木刀もらって、登校して、それから」
「エピソードというの、やりました」
「おお!」ゆんが声を出します。
「うん。そうよね」と夏子。
「木刀で叩きまくる敵っていうか、校舎の中のエピソード。何回かクリアしました」
「おお!」
「あさちゃん」夏子が言います「ひとつ確認しておきたいのだけれど?」
「はい」
「そうだ。名前、なんて登録したの?」と、ゆん。
「ちょっと。ゆんは黙ってて」
「ごめ」
「名前のこと?」
「違います」夏子は言いました、
「あさちゃん。あなた、どこのサーバーに登録したんでしたっけ?」


サーバー。サーバーって、なんでしたっけ。
「ハモっしょ?」と、ゆんが言います、「ハモさば。ちょっと美味しそう」
はも? はもさば?
「ゲームは最初にサーバーを選ぶの。あのゲームは、三つ。上から、ハーモニカ、フルート、カスタネット」
「ログインするとき表示されるやつだよ」と、ゆん。
私は「いちばん上、選びましたよ」と言いました。
「なんて書いてありました?」と夏子。
「さあ。ハッキリとは」
「いちばん上を選んだんならハモっしょ」
「そうね、いちばん上を選んだんならね」
「いちばん上よ。私が選んだの」
「なっつん、どうしたのさ」と、ゆん。

「言ったでしょ、責める気はない、って。
 だけど、なんで?
 なんでなのよ。
 なんで言った通り約束通りにしてくれないの?」

「なんかそれ、なっつんに言ってるセリフみたい」
「悪かったわよ今まで。でも、でも、だからって」
「どうしたの夏子」
「どうしたのはアンタでしょ、あさちゃん」

え。私?

なに言ってるのか、さっぱりわからないよ?と、ゆん。
「え!?」私は自分に向けられている話だとは思いもよらなかったので戸惑ってしまいました、「私? なの?」
「あさちゃんがどうしたって?」と、ゆん。夏子は、
「あさちゃん登録したのハーモニカじゃないのよ」


「はもじゃない?」と、ゆん、「いちばん上を選んだんでしょ?」
「はい」
「なにがあったかしらないけれど、あさちゃんが登録したのハーモニカじゃないことだけは確かよ」
「だめじゃんそれ」ゆんが大きな声で言います、「さば違ったら会えないよ」
「そうなの?」
「そうなの、って」夏子が吐息を深く。
「そうだよ、あさちゃん。はもさばじゃないと会えないし一緒に遊べないよ」



私は登録したときのことを思い出します。
はっきりと名前は分からない、というより、
『いちばん上を選ぶって言ってたけど、これのことね?』
と、確かに三つの選択肢から、ひとつを選んだ作業がありました。
記憶をたどってみると、
「私が見たときは、上から、カスタネット、次に、フルート、下がハーモニカ、だったような」

「あのね、あさちゃん」夏子が言います「サーバーの表示は順番が決まってるの。古くて人の多いハーモニカがあって、次にできたフルート、追加されたカスタネット。なのよ」
「さすがにカスさばは、上に来ないかな~?」ゆんも言いました「カスさば、新参者が多いってうわさだし、基本的に初心者が選ぶサバじゃないと思うよ?」
「あとでログインするとき確認してくれる?」と夏子が言います。
「わかった。じゃあ確認したらどうしよ。電話、する?」
「ねえねえ、それじゃあさ。みんなで一緒にログインしない?」ゆんが言います。
「ゆんがいいっていうなら。っていうか、ゆんのログイン待ちみたいなもんだったし」と夏子が言います「あさちゃんログアウトしたとき、どこにいたの?」
「エピソード終えて、たしか報告だかのあと、そのまま」
「どこ?」
「さあ?」
「じゃあさ、校舎の前で会おうよ」
「ひといっぱいで、わかりにくいし、混んでたら回線落ちするわよ」
「名前で見つければいいじゃん? なんなら校舎の中のロビーとか。人通りはあるけど、立ち止まる人は少ないし」
「そうしましょ。ログインしたら、校舎に入ってすぐのロビー」

「で。あさちゃん、なんて名前にしたの」ゆんに質問されたとき、よく意味が分かりませんでした。
「名前というのは、登録したときの?」と聞き返すと、
「ゲームの登録じゃなくてキャラのほうね」ゆんが言います。
キャラ?
「キャラ?」私が聞くと、うんうんと、ゆん。
「名前?」私が聞くと、うんうん、そうそう、うなづきながら、ゆんが言います、
「ほら。始めたばかりのとき、あなたの名前教えてって聞かれたでしょ? あれあれ」

私は答えました「あさな。ですよ?」

「はい?」
ゆんが聞き返してきました。
夏子は黙ってガラス窓のほうを向いてしまいます。
まさか、とつぶやいたように感じましたが不確かです。
「あさな?」ゆんが言います「漢字ひらがな、それとも」
「あ。漢字も、ひらがなも入力したのに拒否されちゃって。変だなあって思って。それで、あさなってローマ字でねASA... あれ、ふたりとも、どうしたの?」

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0,ppp.@cafe pm

2018.05.19 Sat
「とりまこひ」
「なんの暗号?」と訊くと、
「とりまコーヒー」ゆんが答えます。
だから、とりまってなに。なのですが。
「あさちゃん私も。とりまコーヒー」
「はい」
とりあえずまあ、適当に出しておきましょう。
苦情があればお代いただかないということで試飲用の豆から二杯抽出。音楽が流れているといいのになと思いながら、一滴、二滴、三滴。
「なっつん返してアレ」
「ごめ。置いてきた」夏子は手帳を見ながら答えました、続けて私に、「あさちゃんトーストもらえる?」
「ありがとう」
午後六時二十八分。
水曜日、商店街の灯りが窓ガラス越し滲みます。

ちらほらお客さんが増えてくると、ゆんと夏子は敬語になります。
「あのあとログインしたけど、いませんでしたね?」
あのあと。「ああ。うん。ログインしたんだけどね」
「夏子さんは厳しいですね~
 だから言ってたじゃないですか。こちらのマスターは、カスなんですって」
「聞いてましたわよ? でもほら一応。約束ではハーモニカっていうことでしたので。ね? それともハーモニカで良かったのかしら」
「カスですよカス!奥さん」
「ゆんねえさんもおひとがわるいんだからもう。そんなわけあ」と夏子が話しているときに割り込んで、
「ごめんなさいねサーバーちがっちゃって」と言います。
「ぎんだらの粕焼きとか美味しそう」ゆんがボールペンを床に落としました、「あ。スキマ」
「落ちちゃいましたね?残念」と、床を見ずに夏子。
「あとで拾ってから大丈夫よ」と私は言いましたが、床の割れ目に見事に落ちて、しかもそこだけ深い場所。
誰かに頼んで掘り出してもらいましょう、あとで。
「今日は賑やかですねぇ」ゆんが退屈そうに言います。
「そろそろお祭りの季節ですものね」夏子が話を合わせますが、お祭りってどのお祭りのことでしょうね。
ふと気づけば午後九時八分ってところでした。
ほどよく店内が空いて、ゆんと夏子がカウンターにいるだけになりました。
「おかわりする?」と二人に訊くと、
「ウーロン茶がいい」と夏子。
「じゃあ麦茶」
「それは、それは」私は冷蔵庫を開けて、数日前から入れたままのペットボトルを開けます。いただきものです。
「どうぞ」と出すと、
「これなに?」
「なにこれ?」
「アイスコーヒーです?」と答えておきます。

「にがい」
「まずい」
と二人が言うので、
「お気に召しました?」と。
「にがいよ、これ。くだもの?」と夏子が言います。
「まっずいね、これ。なに。スパイスかなにか?」ゆんが舌を出しました。
「本当にコーヒーですよ。アイスコーヒー。作り置きしておいたの」
「めずらしい豆とか?」と夏子、「でもまあ、飲んだあとサッパリしてるかな。かなあ」
「カレー飲んで冷えたマーボ飲めって言われた感じ」
「カレーもマーボも入ってないですよ」
「にがい」
「まずい」


「いろいろもっと話したかったけど」ゆんが言います、
「また今度」
「に、しよっか?」と夏子。
ゆんはカバンを開けて手帳を取り出しました。
「来週なんだけどさあ」ゆんが手帳を見ながら言います「仕事やめることにしました」

ゆんを見ると、じっと。ああ本気なのね。と、わかる視線の強さを感じます。
「ゆん」と夏子は言ったきり、そのまま。

「いまでもいいよ?」私が言うと、ゆんは首を振りました。


その夜。ゲームの話は、それ以上しないで終わります。

次の日、午後六時十五分を過ぎたあたりで、ゆんが、続いて夏子が来ました。

午後八時を廻ったあたりで、ゆんが「それじゃ」と言い、続いて夏子が「また明日」。
と言いながら閉店まで一時間ほど居座っていました。




午前三時五十分。
朝食の準備を終えて、ひと息つけるタイミング。私はログインします。
校庭の片隅です。誰も、いません。

とりあえずまあ、エピソードでも。

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