2018.05.19 Sat
「とりまこひ」
「なんの暗号?」と訊くと、
「とりまコーヒー」ゆんが答えます。
だから、とりまってなに。なのですが。
「あさちゃん私も。とりまコーヒー」
「はい」
とりあえずまあ、適当に出しておきましょう。
苦情があればお代いただかないということで試飲用の豆から二杯抽出。音楽が流れているといいのになと思いながら、一滴、二滴、三滴。
「なっつん返してアレ」
「ごめ。置いてきた」夏子は手帳を見ながら答えました、続けて私に、「あさちゃんトーストもらえる?」
「ありがとう」
午後六時二十八分。
水曜日、商店街の灯りが窓ガラス越し滲みます。
ちらほらお客さんが増えてくると、ゆんと夏子は敬語になります。
「あのあとログインしたけど、いませんでしたね?」
あのあと。「ああ。うん。ログインしたんだけどね」
「夏子さんは厳しいですね~
だから言ってたじゃないですか。こちらのマスターは、カスなんですって」
「聞いてましたわよ? でもほら一応。約束ではハーモニカっていうことでしたので。ね? それともハーモニカで良かったのかしら」
「カスですよカス!奥さん」
「ゆんねえさんもおひとがわるいんだからもう。そんなわけあ」と夏子が話しているときに割り込んで、
「ごめんなさいねサーバーちがっちゃって」と言います。
「ぎんだらの粕焼きとか美味しそう」ゆんがボールペンを床に落としました、「あ。スキマ」
「落ちちゃいましたね?残念」と、床を見ずに夏子。
「あとで拾ってから大丈夫よ」と私は言いましたが、床の割れ目に見事に落ちて、しかもそこだけ深い場所。
誰かに頼んで掘り出してもらいましょう、あとで。
「今日は賑やかですねぇ」ゆんが退屈そうに言います。
「そろそろお祭りの季節ですものね」夏子が話を合わせますが、お祭りってどのお祭りのことでしょうね。
ふと気づけば午後九時八分ってところでした。
ほどよく店内が空いて、ゆんと夏子がカウンターにいるだけになりました。
「おかわりする?」と二人に訊くと、
「ウーロン茶がいい」と夏子。
「じゃあ麦茶」
「それは、それは」私は冷蔵庫を開けて、数日前から入れたままのペットボトルを開けます。いただきものです。
「どうぞ」と出すと、
「これなに?」
「なにこれ?」
「アイスコーヒーです?」と答えておきます。
「にがい」
「まずい」
と二人が言うので、
「お気に召しました?」と。
「にがいよ、これ。くだもの?」と夏子が言います。
「まっずいね、これ。なに。スパイスかなにか?」ゆんが舌を出しました。
「本当にコーヒーですよ。アイスコーヒー。作り置きしておいたの」
「めずらしい豆とか?」と夏子、「でもまあ、飲んだあとサッパリしてるかな。かなあ」
「カレー飲んで冷えたマーボ飲めって言われた感じ」
「カレーもマーボも入ってないですよ」
「にがい」
「まずい」
「いろいろもっと話したかったけど」ゆんが言います、
「また今度」
「に、しよっか?」と夏子。
ゆんはカバンを開けて手帳を取り出しました。
「来週なんだけどさあ」ゆんが手帳を見ながら言います「仕事やめることにしました」
ゆんを見ると、じっと。ああ本気なのね。と、わかる視線の強さを感じます。
「ゆん」と夏子は言ったきり、そのまま。
「いまでもいいよ?」私が言うと、ゆんは首を振りました。
その夜。ゲームの話は、それ以上しないで終わります。
次の日、午後六時十五分を過ぎたあたりで、ゆんが、続いて夏子が来ました。
午後八時を廻ったあたりで、ゆんが「それじゃ」と言い、続いて夏子が「また明日」。
と言いながら閉店まで一時間ほど居座っていました。
午前三時五十分。
朝食の準備を終えて、ひと息つけるタイミング。私はログインします。
校庭の片隅です。誰も、いません。
とりあえずまあ、エピソードでも。
2018.05.14 Mon
ゴールデンウイークがあけると、毎日のように二人が私の店に立ち寄るようになりました。
正直に言うと、それはそれで嬉しかったのですよ。
まるで学生の頃に戻ったようでした。というよりも、学生生活が義務教育までの私にとって、学生気分それも妄想的な学生気分を味わえているような錯覚。
ゆんと夏子が大学生のとき、気兼ねなく会ってはいたものの、すでに働いている私はどこか引け目を感じていました。意味のない引け目でしょうが、事実なので。
大学に進学した同級生たちが、大学を卒業して社会人になる。そんな当たり前のことが、私には決定的な断絶のようにも思えていたのです。
もう私は、学生になることは、ないでしょうし、ゆんと夏子が経験した学生時代には触れることもできないわけです。そんなこと、とっくに知っていたはずなのに、あらためて思い知らされたというか、どうしようもなく「もう戻れないし無理なんだ」と実感していた春だったのです。
です。
けれども、ね。
「やほお! こんばんは~」ゆんが来ました。
「いらっしゃい、ゆんちゃん」と出迎えます「コーヒーがいい?」
「コーヒーがいい!いちばん高いの!割引で!」
「はい。いちばん安いのを高く売りつけますね?」
「それより、それより」ゆんがカウンターで身を乗り出すようにして私に近づき、内緒話のように言うのですよ、
「つ・イ・に! 始めた?」
私は黙って、うなづきます。
他にお客さまは、いらっしゃいませんでしたので、そこまで気を遣う必要なんてなかったのでしょうが、
「きのうログインしたよ」と小声で答えました。
「そっかあ。やったじゃんよ!」
「おおげさね、なんか」
「いやいやいや。待ちに待ったって感じ。なっつんも電話で興奮してたんだよ今朝」
「今朝?」
「ゆううつな月曜の朝、いきなしよ。かかってきて何事と思ったら、まじナニゴトよ! あさちゃんがあって」
「それは、それは?」
「これは確認せねばと今夜ここに来ようと話してたわけ。あー。待ちわびたわ。長かった月曜まじ地獄」
「おかえり」
「ここは天国みたいだね~」
「地獄でも天国でも人間の世界なのでお勘定はいただきますわよ?」
「つけといて!」
「は!?」
初めて言われました。
『つけといて』
ドラマかシネマかノベルの世界なら、と思いますけど。現実の世界でも、いるのね。言う人。聞くの初めてで。
「やだなあ、あさちゃん。蒼ざめないでよ、冗談だって」
冗談。ああ、そうなの。
「驚いた」
「シャレよシャレ。マジに受け取らないでってば」
「つけといて? ほんとに言う人いるのね」
「だからさ~」
ガラス窓の向こうに夏子の姿が見えました、
「あ。夏子」と私が言うと、
「来た?」ゆんが振り返って窓を見ました。ほんとだ、おーい、としゃべりながら手をふり始めます。
「たぶん見えてないと思う」と私が言うと、
「そうかな。見えてるでしょ」
「こんばんは」と夏子が入ってきてカウンターに来るなり、ゆんの頭をチョップしました。
「なになに、いきなり」ゆんが驚くと、
「なんでも。ごきげんそうね、会長」と夏子が言います。
「いや私は、もう」
「知ってるわよ! 嫌味で言ってるの」
「あさちゃん、こいつさあ、ずっとこんな感じなの。なんか言ってやって」
「はい。ゆんが悪いわ」
「はあ!?」
「だって原因を作ったの、ゆんなんでしょ?」
そうそうそう、そうそう、と夏子がうなづいています。
「夏子は紅茶のほうが好きだっけ?」
「ううん。コーヒーいただくわ。あさちゃんのオススメで」
「かしこまりました」
「なんでふたりして、いじめるかな」
「いじめてなんかないわよ」と夏子が答えます、「ただ事実と現実を言ってるだけのことですから」
「ちくちくするよ~」
「でも、よかったじゃない。ゆん」と私が話に入ります。
「よくない。それ、いやみ~」と、ゆんが言いましたが、
「さっき夏子は、ゆんのこと『会長』って呼んだよ?」
「それもいやみ~」
夏子はメニューを手に取って眺めながら黙っています。
「はじめ私も、そう思ったけど。夏子が言ったじゃない、事実と現実だって」
「だからなに? それが、いやみじゃん」と、ゆんは夏子の脇をつつきます。やめてよと小声で夏子。
「ゆんが会長。いまでも。それが現実。ってことなんじゃないかしら。ね?」と私が夏子に言うと、
「許せないけどね。でも、なんかね。わからなくもないっていうか仕方ないっていうか」
「なっつん?」
「あれからログインしてないんでしょ?」と夏子が言います「誰に聞いても来てないって言うから」
「とうぜんよ。行けるわけないじゃない、あんなことして」
「自覚あるのね」
「自覚もなにも。わるいことしちゃったなって」
「またゼロから始めましょ」と夏子は言いながら私のほうを見ました「それに」メニューを元の場所に戻し「あさちゃんも始めたんだし」
うん。そう。そうだった。よね? と、ゆんが言いながら、
「なっつん、ホントごめん。他のみんなにも、ちゃんと謝る」
「うん。そうしてね?」
「うん。あわせる顔なんてないけど、みんなに会いたい」
「それなら大丈夫よ心配ないわ。メンバーほとんど怒ってないから」
「そう、なの?」
「うん。怒ってるのは私くらい」
「ごめん! なっつん」
ゆんの頭を見たあと、夏子は私に、
「ねえ。聞かせて。どんなだったの?」
「ゲーム?」と私が訊き返します。
「うん」
「それ。気になる。教えて教えて」
「無事にログインできました」
うんうん。それでそれで。と、ゆん。夏子はバッグから手帳を取り出して、なにか確認し始めました。
「入学おめでとう~!みたいな?」
「うんうん」
「あなたの名前を教えてくれる? みたいな」
「うんうん。それでそれで」
「木刀いただきました!」
「やったあ!まじ、はじめたんだね」
「おまたせしました」
「これでやっとみんなで一緒に遊べるね。よかったよかった」
「よろしくお願いします。ね」
「よかった。ほんっとうに、よかった。なっつんもありがとう、教えてくれて。あと、その、えと、
許して?くれて」
夏子は手帳を閉じて、ゆんと私を交互に見ます。首だけ上下に、うなづきつづける仕草で。
「ギルドのメンバーに、ちゃんと謝るから。そしたら、みんなでギルド新しく作って一緒に遊ぼう。あさちゃんも一緒に」
「はい。よろしくね。いろいろ教えてもらわないといけないけどね」
「なんだって教えるし、なんでも聞いて。みんな親切だから初心者とか気にしないでいいからね」
「ありがとう」
「あのう、おふたりさん」夏子が言います「楽しそうに盛りあがってるとこ大変に申し訳ないのですが」
「あ」ゆんが言います「なっつん、ごめん。つい調子に乗っちゃって。ギルドの会長は他の誰かでいいからね?」
「それはまた別の話、いまは気にしてません」
「そうなの?」
「あれ夏子ちょっと不機嫌?」
「不機嫌もなにも」夏子は話し始めました「わかってないようだからハッキリ言います。私たち、みんなで一緒には遊べないから!」
から~んカウベル鳴って条件反射、
「いらっしゃいませ」と私。
お客さまがいらっしゃいました。ゆんと夏子と三人だけの会話は、いったん中断になりました。
気がつけば二時間以上が経過していて、そろそろ店じまい準備のラストオーダータイム。ふたたび店内は、三人だけになりました。
「長居しちゃったね。迷惑じゃなかった?」と夏子が言いました。
「なんだか、あっというまだった。楽しかったね?」ゆんが言います。
「ええ、まあ」私は答えました。
会えて嬉しいのは本当ですし、一緒に話している時間は楽しかった。のですが。
少し混雑してからは仕事の対応が多くて、カウンターでは互いに目と目を合わせてはポーズをとったり、目くばせしたりするくらいでした。なんとなく、いろいろ。いろいろ聞きたいし話したいし確認したいなって思いながらも、言葉にできないまま時間だけが経過していました。
「あさちゃんラストオーダー終わっちゃったけど、なにか飲み物いただけない?」
夏子が最初に沈黙を破ります。
「アイスコーヒー作り置きなら」
「お願いします」
「あ。同じの」ゆんが言いました。
「やっぱり気づいてないみたいですね?」
夏子が話し始めました。
「責めるつもりは、ないです。まったく。
そもそも?
リアルでもゲームでも、
トラブルメーカーなのは、いつも私。
なので謝らなきゃいけないの、むしろ私」
「そんなに気にしなくても」と私が言うと、
「あさちゃん!」と夏子が声を大きく言いました。
ゆんは黙ってアイスコーヒーを飲んだり、置いたり、また手に持ったりしています。
深い吐息のようでした。
夏子の態度に「ためいき、しあわせ逃げてくよ~」と、ゆんが言います。
「ご心配どうも」そのまま話を打ち切ってしまう夏子でした。
「そろそろ帰ろうかな」と、ゆんが言います、「また寄るね」
「今日は、ありがとうございました。またいつでも」
そう私が言うと、
「まあ簡単に済ませましょ、話」と夏子が言いました。
ゆんと私は顔を見合わせます。
「あるんだ、まだ。話」と、ゆん。
私はカウンターの中での片付けが済んだので、エプロンを外します。カウンターの端、椅子を出して座りました。
「ええ。言っておかないといけない話が。たぶん私にしか言えない話みたいだし」
「言って」と、ゆん。
私は黙って夏子を見ます。
「ねえ、あさちゃん。ゲームいよいよ始めたのよね?」
夏子に質問されて「はい」と答えます。
「もうログインして、木刀もらって、登校して、それから」
「エピソードというの、やりました」
「おお!」ゆんが声を出します。
「うん。そうよね」と夏子。
「木刀で叩きまくる敵っていうか、校舎の中のエピソード。何回かクリアしました」
「おお!」
「あさちゃん」夏子が言います「ひとつ確認しておきたいのだけれど?」
「はい」
「そうだ。名前、なんて登録したの?」と、ゆん。
「ちょっと。ゆんは黙ってて」
「ごめ」
「名前のこと?」
「違います」夏子は言いました、
「あさちゃん。あなた、どこのサーバーに登録したんでしたっけ?」
サーバー。サーバーって、なんでしたっけ。
「ハモっしょ?」と、ゆんが言います、「ハモさば。ちょっと美味しそう」
はも? はもさば?
「ゲームは最初にサーバーを選ぶの。あのゲームは、三つ。上から、ハーモニカ、フルート、カスタネット」
「ログインするとき表示されるやつだよ」と、ゆん。
私は「いちばん上、選びましたよ」と言いました。
「なんて書いてありました?」と夏子。
「さあ。ハッキリとは」
「いちばん上を選んだんならハモっしょ」
「そうね、いちばん上を選んだんならね」
「いちばん上よ。私が選んだの」
「なっつん、どうしたのさ」と、ゆん。
「言ったでしょ、責める気はない、って。
だけど、なんで?
なんでなのよ。
なんで言った通り約束通りにしてくれないの?」
「なんかそれ、なっつんに言ってるセリフみたい」
「悪かったわよ今まで。でも、でも、だからって」
「どうしたの夏子」
「どうしたのはアンタでしょ、あさちゃん」
え。私?
なに言ってるのか、さっぱりわからないよ?と、ゆん。
「え!?」私は自分に向けられている話だとは思いもよらなかったので戸惑ってしまいました、「私? なの?」
「あさちゃんがどうしたって?」と、ゆん。夏子は、
「あさちゃん登録したのハーモニカじゃないのよ」
「はもじゃない?」と、ゆん、「いちばん上を選んだんでしょ?」
「はい」
「なにがあったかしらないけれど、あさちゃんが登録したのハーモニカじゃないことだけは確かよ」
「だめじゃんそれ」ゆんが大きな声で言います、「さば違ったら会えないよ」
「そうなの?」
「そうなの、って」夏子が吐息を深く。
「そうだよ、あさちゃん。はもさばじゃないと会えないし一緒に遊べないよ」
私は登録したときのことを思い出します。
はっきりと名前は分からない、というより、
『いちばん上を選ぶって言ってたけど、これのことね?』
と、確かに三つの選択肢から、ひとつを選んだ作業がありました。
記憶をたどってみると、
「私が見たときは、上から、カスタネット、次に、フルート、下がハーモニカ、だったような」
「あのね、あさちゃん」夏子が言います「サーバーの表示は順番が決まってるの。古くて人の多いハーモニカがあって、次にできたフルート、追加されたカスタネット。なのよ」
「さすがにカスさばは、上に来ないかな~?」ゆんも言いました「カスさば、新参者が多いってうわさだし、基本的に初心者が選ぶサバじゃないと思うよ?」
「あとでログインするとき確認してくれる?」と夏子が言います。
「わかった。じゃあ確認したらどうしよ。電話、する?」
「ねえねえ、それじゃあさ。みんなで一緒にログインしない?」ゆんが言います。
「ゆんがいいっていうなら。っていうか、ゆんのログイン待ちみたいなもんだったし」と夏子が言います「あさちゃんログアウトしたとき、どこにいたの?」
「エピソード終えて、たしか報告だかのあと、そのまま」
「どこ?」
「さあ?」
「じゃあさ、校舎の前で会おうよ」
「ひといっぱいで、わかりにくいし、混んでたら回線落ちするわよ」
「名前で見つければいいじゃん? なんなら校舎の中のロビーとか。人通りはあるけど、立ち止まる人は少ないし」
「そうしましょ。ログインしたら、校舎に入ってすぐのロビー」
「で。あさちゃん、なんて名前にしたの」ゆんに質問されたとき、よく意味が分かりませんでした。
「名前というのは、登録したときの?」と聞き返すと、
「ゲームの登録じゃなくてキャラのほうね」ゆんが言います。
キャラ?
「キャラ?」私が聞くと、うんうんと、ゆん。
「名前?」私が聞くと、うんうん、そうそう、うなづきながら、ゆんが言います、
「ほら。始めたばかりのとき、あなたの名前教えてって聞かれたでしょ? あれあれ」
私は答えました「あさな。ですよ?」
「はい?」
ゆんが聞き返してきました。
夏子は黙ってガラス窓のほうを向いてしまいます。
まさか、とつぶやいたように感じましたが不確かです。
「あさな?」ゆんが言います「漢字ひらがな、それとも」
「あ。漢字も、ひらがなも入力したのに拒否されちゃって。変だなあって思って。それで、あさなってローマ字でねASA... あれ、ふたりとも、どうしたの?」
2018.05.07 Mon
「なんで?」
「なんでも」
「だから、なんで」
「なんでもないの」
「それじゃわかんないよ」
「わかんなくていいよ」
「やだ」
「って言われてもなあ」
私が部屋に入ると、夏子がベッドに倒れるように転がっていたのですよ。ゆんはパソコンの前。ゲーム画面から音楽が流れているのに、あれれ止まっています。
「ゆん?」と私が声をかけると、
「ああ?ああ。おつかれちゃん」と低いトーンの返事。
夏子は壁の方を向いたまま転がっていますね。
「なにか、あった?」
「まあね。ていうか、よくわかんない」と、ゆんが言うと、
「なにがよくわかんないよばか」と夏子が叫びました。転がったまま。
「しょうがないじゃん」ゆんの右手はマウスを持って、え、あれ、あれれ。
「ゆん。画面、固まってる?」私が訊くと、
「いあ、ちとAFK」
「そう?」
「そう」
ゲーム画面のなかは、ゆんがひとりだけ。
「今日は静かね?」
いつも賑わっているイメージだったので、ぽつんとひとりきりでいるのを見るのは珍しいのですよ。しかも、
「誰も話してない?」チャットが流れていません。
「いあ」
「ゆんのばか!」
「どうしたの夏子」私は転がっている背中に声をかけます。
「こいつさあ!」と夏子は起きあがり私のほう、
「え!?」夏子は涙を流していました「夏子?」
「聞いて。こいつギルド解散しやがったのよ」
私を、じっと見据えながら強い口調で言い放ちました。
「解散?」私は夏子の言葉を繰り返し。
「しかも、いきなり!理由言わないし。なんなのよ!」
ゆんを見ると、じっと画面を見たままです。
いちおう顔を覗き込みましたが泣いてるふうもなく、
むしろ毅然としている感じっていうか。
「なっつんごめん。これしかなかったの」
「ざけんなばか」夏子はベッドから立ち上がり、ゆんの首を絞め始めます。
「なんで、なんで、なんで?」夏子の目から涙が流れているのですが、なんでなのか、ただただ湧き水のように透き通っているなと思ってしまうだけでした。
理由を聞いていいのか、聞かないほうがいいのか、見当もつきません。
「解散。じゃあギルド。なくなっちゃったの?」
ゆんの首を絞めながら夏子は勢いよく連続で頷きました。
「あさちゃん、ごめんね」ゆんが言いました。
「このまま死んじゃえ」夏子は首を絞め続けています。
「あさ、あ、なっつん止めてくれな、いの?」
「う~ん? わかんないけど夏子が怒るの珍しいし、ちゃんと理由あるんじゃないかなあって思って」
「くるし。ぬ。まじ」
「夏子、刑務所行ったらなんにもできなくなるよお?」
「わかってる。わかってる。わかって、けどさあ」
「ねえねえ私いちおう入ることになってたギルドだよね?」
「もうないけどな」夏子が言いました。ゆんも何か言っているような気がしましたが声が出せないようでした。
「理由、聞かせて欲しいんだけどな?」と私が言うと、
ゆんは左手を挙げてバタバタしました。
「いったん、やめようよ?」と夏子に言うと、
「私も。教えて。聞きたいから」と夏子は手を緩め、ゆんに言いました。
経緯は単純。なにやら、もめた。たまり場で。言い合いになった、いつものこと。なのに今夜は許せなくなって?
「ぽちっとしちゃった」ゆんが言いました。
「ぽちじゃねえだろばか」
「ぽちってなに!?」
「あさちゃん、こいつさ。喧嘩の途中ブチ切れちゃって、ギルド解散のボタン押しちゃったのよ。いきなり」
「だめじゃん!それ」
「でしょお? ほら!ゆん、あさちゃんも怒ってんじゃん」
「怒ってるっていうか不思議? 謎っていうか」私は言いました。
ゆんは咳を何度かしてから私が運んできたコーヒーを手に取り、
「まだ熱いかも?」と私が言うより早く飲み始めました。
「先に言ってよ」ゆんは舌を、やられたようでした。
「ごめん。反省してます」ゆんが正座して軽く頭をさげて言うのでした、「勢いとはいえホントごめん」
「コーヒーすっぱいなあこれ?」と夏子が言います。
「わかる? フルーティーでしょ?」
「苦いほうが好きかな。酸味いらないし」
「それ高いのよ?」
「安くても美味いほうがいいの」
「おかわりは深煎りにするね」
「おねがい。て、ゆん!逃げんなよ」
「逃げないってば」
「説明して。いいから」と私も言いました。
「じゃあ、ちょっと巻き戻すから一緒に見て」ゆんはチャットログを巻き戻して話し始めました。
2018.05.04 Fri
「きのう、ゆんと会った」と夏子が電話してきたのは木曜日のランチタイムでした。
「きのう?私一緒にいたけど」
「聞いてる。まだ始めてないんだって?」
「うん」
「興味うせた?」
「かもしれない」
「無理しなくていいと思うよ? 無理してやるほどのもんじゃないし」
「根拠は?」
「根拠って・・・いあ、ただのゲームなんだし」
「ただのゲーム」
「そ」
「ぬかしてんじゃないわよ!」
「お!?」
「たかがゲーム?そのたかがゲームで心を折ったの、どこの誰なのよ」
「たかがとは言ってない、ただの」
「おなじ!」
「落ち着いてよ、あさちゃん」
「やだね」
「私も悪かったと思ってるって責任感じてるんだ。あんなことがあったから」
「なんのことかわからないんですけど」
「だから本当にゴメンて」
「なんのことかわからないけど、とりあえず許す」
「よかった」
「よくないわ!」
「どっちなのよ、もう」
「このさいだからハッキリ言うわ。戻ってきなさい夏子。そしたら始める」
「え~」
「戻ってきなよ。一緒に遊ぶ約束したじゃない」
「それは確かに、したけどさあ」
「戻ってきて。そしたら始める」
「考えとく」
「なにを?」
「とりあえず、いろいろ」
「いろいろ?」
「いろいろ」
「とりあえず?」
「とりあえず」
「考えてどうするの?」
「決める」
「なにを?」
「・・・いろいろ」
「いろいろねえ」
ごめん私、仕事に戻らないと。そう言って私は電話を切りました。
確かに時間は時間だったけど、仕事は暇でしたからもう少し電話を続ける余裕は、あったんですけど。
夕方、ゆんが店に寄ったので「ね。あのあと夏子と会ったの?」と訊きました。
「ひょっとして聞いた?」
「聞いた」
「そっか。あの子も、しょうがないよねホント」
「うん。ホントしょうがない」
「かなり荒れてたっしょ?」
「いつものことよ」
「昨日はホントすごかったんだから。いきなり、あたしんち来たのよ」
「え、そうなの?」
「早く寝たかったのに朝早いから。今日完全寝不足」
「じゃ、おやすみなさい」
「いあ、まだだけど?」
「むりしなさんな」
「むりしないと、やってけないよ」
この春、ゆんと夏子は大学を卒業したばかり。社会人になったところでした。
私たちの同級生で、大学に進学した人たち。この春から社会人。
私は早くに学校を卒業して、とっくに社会人なんだけど、まわりで社会人になるのを見ていて、
『なんだか引き離されていく感じがするな』と感じていました。
なんとなく、いつかまた学校で会る、そんな気持ちがどこかにあったんだと思います。
あるわけないし学校で会えるわけないのに。
大学の学園祭に呼ばれたことがありましたが、それは別世界チックで学校で会うとのとは感覚的に違うというか。
私の居場所じゃないし、と思い知らされることだらけでしたし。
もう、このまま、どんどん引き離されてしまうんだろうなあ。
そんなふうに、うっすらと思っていました。
ところが。
「で、結局、なっつん、ありゃだめだわね? もう手遅れ」
「いまさら?」
「そ。いまさら。久しぶりに会ったけど、変わってないし」
「変わる必要ないし」
「なっつんは変わった方がいいと思う。あの性格、あのまんまじゃ」
「変わんないわよ。ひとの性格なんて」
「そうかなあ。あさちゃんなんて、ずいぶん変わったじゃん」
「かわんないわ」
「それ。そういうとこ、昔と違うし。見た目は変わんないけど」
「まあ、そのてん、ゆんは見た目、変わったよね?」
「ひとそれぞれ、なのかな?」
「でしょうね。で。夏子なんて言ってたの?」
「ゲーム戻りたい遊びたい、みんなに会いたい! って」
「よかった! じゃあ、みんなて遊べるね」
「そ。遊べる。みんなで。ああ、あ」
「よかったあ」
「よかったけど、いいのかなあ?」
「いいにきまってるじゃない。よし!私も始める」
「あさちゃんが始める気になってくれるのは嬉しい。正直それ大歓迎。ただ、なっつん」
「別にいいんじゃない? トラブルメーカーなんでしょ」
「そ。超トラブルメーカー問題児。なんでゲームの中では、ああなっちゃうかね?」
「そういうもんでしょたぶん」
「そういうもんだと困るんだよねえ。振り回される身にもなってよ」
「私は振り回されないわ」
「だってゲームやってないし」
「やってたって同じよ。ひとは、ひと。私は私」
「そういうとこ正直うらやましい」
「ゆんは親切すぎるのよ。優しくするのは彼氏だけにしなさい」
「そうしたいんだけどね、あたしも」
「コーヒーごちそうさま。美味しかった」
「ありがとうございました」
「だいぶ板についてきたね?」
「ありがとうございます」
「しかし驚いたなあ。クリーニング店、改装して半分カフェだなんて」
「楽しいわよ?」
「バイトしたかったあ」
「私は雇いませんよ?」
「そんなことないでしょ。雇うでしょ。なんで二年早くオープンしてくれないかな」
「いろいろとありましてね?」
「いろいろね」
「うん。いろいろ」
「なっつんも言ってた。いろいろありすぎたって。ありすぎたけどリセットしたいってさ」
「すればいいのに。するのよね?」
「どだろ。本人そう言ってるけど、あの性格だから」
「まだ私、想像つかないのよね。夏子の、その、ゲームの中での」
「それがいい。それでいいと思うよ? あたしなんか、あれ全部夢であってほしいって思うし今でも」
「お疲れさまでした、会長」
「ありがと。そう言ってもらうと救われる」
「これからよろしくお願いしますね、会長!」
「お。そっか」ゆんは突っ伏していたテーブルから頭をあげて言いました、
「本当に始めるんだね?」
「うん。よろしくね」私は言いました「ゆんのギルド、入れてね?」
「もちろん!大歓迎だよ。ていうか早く来てよホント」
「このあと、ログインするわ」
「やった。やった、やっとか。待ちわびたぞお~?」
「待たせたなコジロー」
「あさちゃん、キャラの名前は決めた?」
「うん。まりるだよ」
「…微妙」
「そうなの?」
「もういそう。ていうか、見たことある気がする」
「同姓同名なんて世の中ザラでしょ」
「まあ、いいか。じゃあ、今夜ひょっとして会えるかも?」
「うん。校庭の真ん中だっけ、たまり場」
「そ。まあ、いろんなひとがいるけど、だいたいそこにいる。今夜は必ず」
「よろしくお願いしますね、会長」
「名前はロゼッタだよ」
「ロゼッタ会長、おてやわらかにお願います」
「くるしゅうない!」
2018.05.04 Fri
「それで、どうするの?」
「始める」
「じゃあ早くやろうよ」
「うん」
わかってる。
わかってるけど。
始めたくてパソコンも手に入れたし、
インターネットにも繋がりました。
なのに、始めないまま年は明けてしまい、
ついに春も過ぎようと。
「いつまでたっても始めなきゃ始まんないよ~」
「それもそうね?」
「だいたいなんで?始めないのよ。なっつんのこと気にてるの?」
「気にしてるけど関係ないわ」
「気にしてるんだ」
「ゆんは気にしてないの?」
「心配は多少。でもしょうがないじゃん、あの件は」
「うん。しょうがない。だから関係ない」
「じゃあ始めましょ?」
「あと一日考えさせて」
「考えるって、なにを?」
「とりあえず色々と」
「いろいろってなに? とりあえずなら始めようよ」
ゆんは私の部屋で「早く早く」と、その日も急かしていました。
「ダウンロードは完了してるの?」
「インストールも終わってる」
「なら、なんで?」
「だから始めるって言ってるじゃない、しつこいんだから」
「しつこくさせてるの誰!ちっとも始めないからでしょ、あさちゃんが」
「だから始めるってば」
結局その日も始めませんでした。
週末はゴールデンウイーク、そんな水曜日の夜。
2018.04.29 Sun
ゴールデンウイークですね。
いかがお過ごしです?
私は元気にしています。
オンラインゲームの世界から、
ずいぶん遠くなってしまった感覚があります。
いろいろな記憶が薄れつつも、
どうにも鮮やかに覚えていることもあるものですから、
少し自分の気持ちを整理するために綴ってみようかしらと。
考えました。
こっそりと、また、ここに来ます。
2017.07.30 Sun
エミルクロニクルオンライン終了が決まったようですね。今年の8月31日までのようです。
ガンホー登録でワンタイムパスワードやらなにやら、認証手続きが増えたときから遠ざかっていました。
でも、いずれまた、という気持ちがあったわけです。
現在の状況から、ログインすることなくゲーム終了の日を迎えることになります。
とても残念ですが、事情やら理由やらがあるにせよログインしないまま月日が経過したわけですから、こればかりは仕方ありません。もう一度、常夏のタイニーアイランドを見たかったな、などど言い始めたらきりがありませんが。確かに月日は経過しました。
今でも、オンラインゲームで楽しそうなのがあればと、ふらり検索してみることがあります。
いつか、新規登録して始める日が来るかもしれません。
でも現実には、エミルクロニクルオンラインすなわち「ECO」のサービス終了が、私にとってのオンラインゲームとの関わりの終わりになるのかしらと。この現実を、なんとか、受け入れて、そのうえで、また次に何かがあれば。ないとしても、また、いつか。
ヨーグルティングすなわちYGがサービス終了するときは、「おしまい」という気持ちに深さがありませんでした。
YGは、本当に、もう「おしまい」というのがゲーム内の空気も含めて納得できるものでしたから、かえって「また違うゲームでね」「ツイッターで」などなど、素直に再会を願えました。ここはここ、さて次は、などと気楽に。さみしさは大きく、とてつもなくポカリとしてしまいましたが、それよれも大きな期待というか、うん、なんでしょうね、なにかがありました。もちろんECOも、再会の場所のひとつです。でした。過去形になってしまいました。
ECOが、なぜ終了するのか、ぱらっと見聞した限りでは判りませんでした。
とてつもなく大きなポカリとしたものが、まあ、言ってもしょうがないのですけれども。それより残りの一ヶ月を、楽しめば良いのでしょうから。まさに、この夏を、楽しめば良いのでしょう。いまさらながら、簡単ではなくなってしまったログイン方式が、『どうしてかしら』としか言いようがありません。
あと一ヶ月あるというのに、ログイン出来ない状況ですから、もう「おしまい」も同然な感覚です。この「おしまい」には深さを感じています。寂しさの底に足が届く気がしません。なんとなく海に浮かんでいるような感覚です。海も空も青くて美しいです。
エミルクロニクルオンライン終了、ですね。私はログインできる手段を持っていませんので、これで「おしまい」です。正確には、前回のログインが、そのまま「おしまい」になります。
ゲーム内で一緒に遊んだ方々、お世話になった方々、会いましょうと言いつつ会えずじまいの方々。
ほんとうに、ありがとうございました。
2017.07.30 Sun
hello,this is asana.
log in now.
2016.08.11 Thu
空蝉。セミの抜け殻。
あたりまえのことを言ってるだけ。
今年もフィールドに真夏の空気が満ち溢れていて、
葉の裏や枝先に。
私が選んだバインダー、この表紙の色。
商店街の文具店で見つけた夏の午後、勢いで買ったもの。
勢いと言っても、直感で買ったというだけで、静かにレジに持って行って。
走り書きだらけのルーズリーフ。
夏になると聴きたくなる音楽のの、ひとつ。
ヨーグルティングのサントラ盤。
ヨーグルの音楽は大好きだけれど、サントラ盤を買ったのは得点が目当てだったり。
ログインすれば、登校すれば、聞ける曲なので、わざわざCDを聴かなくても、
なんて思ったことも、あったような。
世界樹の記憶。
現在、身近なところにプレイヤーなし。
聴きたくなったからといって、すぐ聴けるわけでもなく。
まあなんていうのか記憶の中の夏は、あまりにも鮮明で、
懐かしいというよりも、
ついこのまえのようなだけで、
本当に本当に本当に、
なんて言ってみればよいのでしょ。
時間だわ。
2016.08.10 Wed
夏だからこそ、涼しいところ。
少しでも涼しいところへと足が向かう。
急いでいるわけではないけれど、
ゆっくりしてもいられない。
どこか本当に涼しいところ。
私にとって、夏の記憶は鮮明なまま。
でも本当のことかしら。
覚えているのは私だけ、なんていうことは。
いつのまにか塗り替えられていて、
まったく別なことを本当のように思い出しているとしたら。
あんなに通った公園が、
ストリートビューで見ると、まるで違う世界。
どれほど通ったことか、
という街も路地も、
最新の映像で確認すると_____なにか違う。
同じ、はず。けれども違う。
イメージだけの話なら、良かった。
最近ふと気づいてしまったのだけれど、
駅から歩いていた感覚と、
地図上をたどる感覚とが、
まるで別物。
そっちじゃないでしょっていう場所に、ある。
こっちじゃなかったよねっていう方向に、ある。
確認に出かけられる距離じゃないからこそ、
とても便利な地図と映像を見ているんだけれど、
なんでしょうね、
私の感覚、夏の記憶。
空気管に送り込んだ感情が、
無色透明なまま大気に放り出されて散らばっていくのを、
じっと。
ただ、じっと。
時間ね。もういかなくちゃ。
2015.08.12 Wed
しばらく放りっぱなしでした。
とくに新しく何かを始めたわけでもありませんが、
少し読み返したり、改変させながら過ごして見ようかと思っています。
よーぐる卒業後は、これという何かの気配もなく、なんでしょうかね。
ブログとしての存在も、なんだかちゅうぶらりんのまんま。
でも当然といえば当然なのかしら。
ある意味で、この状態こそ自然な気がします。
また今日から、ぽつりぽつりと書くこともあると思いますが、
もはや時系列ではなく、気の向くまま。
ふと思い出が、よみがえると『登校』というかログイン画面のメロディが浮かんできます。
欲を言えば、きりがなく、かといって。
覚えていますし、思い出してしまうこともありますし、
でも、だからどうというわけでもないような。
なんでしょう。夏の暑さのせいです?
思い出を散らかしながら登る螺旋階段のような、
なんでしょう、やっぱり夏の暑さのせいですね。
2015.08.11 Tue
2006(*゜▽゜)ノヾ( ' ▽ '*)2010
ミ☆☆☆彡
2006入学--2010卒業
ミ☆☆☆彡
はじめたきっかけは、2005年夏に配布されていた宣伝団扇を見たことです。
2005年秋にPCを購入、
2006年春の入学を目指しましたが、
ゴールデンウイーク明けになりました。
2006年
5.11 エスティバー学園に入学
5.25 2年生に進級
6.25 同好会 「すたーだすと☆めもりー」結成
設立式直後に3年生への進級式
8.14 同好会レベルアップ2
8.31 4年生進級式
世界樹集会を開催→「定期集会」へ
(ウクレレサーバーでも活動あり)
2学期実装により「定期集会in聖堂」へ
12.22 5年生進級式
2007年
おしゃべりとファッション
「定期集会forおしゃべり」
2008年
自由登校
「定期集会forリゾート」
2009年
新PC&インストール
すくーるらいふあげぃん
「定期集会」から「交流」へ
12.1~12.31 準冬眠
越冬
2009.12.冬至~2010.2.立春
2010年
フレンズふぉえばっヽ('▽'*)ノ
[2.15.YG公式にて卒業式の日程発表]
5月9日ラストサンデー
5月11日、卒業あるばむ完成
卒業文集完成
5月13日、下校しました。
5.14.YGサービス停止、
お疲れ様でした。
6月25日、
卒業あるばむからの、
セレクト写真を掲載しました
四年間の学園生活に心から感謝と祝福を☆彡
2015.08.11 Tue
さてさて、なにを、どうしたものやらですが。
話そうとしたとたんに、からっぽ。今日は話せるかもと感じていたのに、からっぽ。
話といっても、あれですねあれ、よーぐるの話です。
正確には、よーぐるにまつわる、あれやこれや的な、なにか。
みたいな。
リアルタイムの学園生活をブログで綴っていましたが、
当時から思っていたんですよね、
いつか違った視点からも書けたらなって。
よーぐるを始めてから(入学)、ブログを始めるまでの期間、
まるまる二ヶ月くらいが空白ですし、
表向きの話と裏話を混ぜ合わせたりとか。
今日は話せそうな気がしたんですけどね。
まだまだ覚えているし、
いろいろ忘れているんでしょう。
むしろ、
もっともっと忘れたほうが、
残された記憶が鮮明になって、
話しやすくなるかもしれません。
そうなるとフィクションの世界ですか。
そろそろ出かける準備のタイミングです。
それでわ!
2015.08.11 Tue
世界樹の音楽ふと思い出したので、こちらに。
以前のようにはネットを自由に使えないので、
とぎれとぎれになりがちですが。
暑いですがカラッとしているような?
やっぱり夏は、いいです。夏が、いいです。
なんていうのかホッとできます。
鍾乳洞の冷たい空気を思い出しながら、
倉庫のかたつけなどなどしています。
2015.03.19 Thu
さがしていたんですよ。
いまとなっては、どうということもなさそうな。でも、そのときは必死。かなり。
いつもの場所になくて、ありそうだなってところにもなくて。
で。
2015.03.19 Thu
続いてるのか途切れているのか判断は人に任せることにして、とりあえず。
一歩螺旋上へ上へ上へ。
上へ。
2015.03.19 Thu
どこから話せばいいのでしょ。そんなこと気にしても仕方ありません。ですが。
なんとなぁく、なのですよ。
2015.03.19 Thu
なにかを目指しているというより、なにかに導かれているような。
これといって特徴を見出せない建物の外観。ここも。あっちと似ているのですよ。
さがしていたと言えば、まあ確かに?
当時は自覚できませんでしたが。
タイミングばかり気にして、せっかく来たのに登らなかったり、別の用事があるはずなのに来てみたり。
一歩、そんなの、わけないわ。
上へ上へ上へ。
2015.03.19 Thu
同じ場所ぐるぐる。
いいえ似ているだけの錯覚です。
緯度と経度が同じだけ。螺旋を登り、上へ上へ上へ。
2015.03.19 Thu
ここが?
階段を見あげながら『なんかやばそう』と思ってしまったのですよ。
まあ、でも。住所あってるし。看板ないのが気がかりですが。
結局、階段を登らずに帰ってきました。それが良かったのかどうかは不明。ですが、結果として。
タイミングなのですよ。
タイミングなにごとも偶然と必然は表裏一体で、あのときの『なんか』にも、それなりの意味と言うか効果があったのかなあ。と思うしだいで。
2014.09.10 Wed
ですヽ('▽'*)ノ
はばないすでヽ('▽'*)
2014.08.03 Sun
今日も暑いです。
週末はイベントの手伝いやらで、ずいぶん汗をかいてしまいました。そろそろ村祭りもあります?
よ~く冷えて、ひえひえな麦茶やアルコールフリーなどなど、おいしく感じられます。家ではコーヒーですが。

なるほど、こういう保存もあるのですね。
画像はヨーグル時代のSSから。これ、ブログの画像としてアップロードしておいたものです。すでにブログの中で使用していた画像です。今でも簡単に呼び出せるとは。
学生の頃(注・えすてば学園)のパソコンやハードディスクは、もう手元にないので、見たくなったからといってSSを懐かしむことはできないのですが、ですが、こうしてブログの中に保存されているのだなあと。ブログのシステムのこと、しっかりとは認識していませんでした。
なんとなく、再利用。
前回の「八月二日」にも利用してあります。
あちらは「世界樹(夜?)」ですね。
新しい絵や写真をアップロードするのは手間なのと容量の問題があるのですが、こういうのなら、まあ、負担も少ないのかなあ。まあ、ここを見に来る人などというのも今や居ないに等しいかな。ツイッターは、ときどき見てます。ときどきです。
2014.08.02 Sat

一年が過ぎ、また一年。
なんとなく雑用に追われている感じもします。
暑すぎて、朝のうちしか畑にいられません。
週末は麦茶作りです。
2014.07.15 Tue
すっかりオンラインゲームから離れていますが、ふとした時に、よーぐるでのことを思い出すことがあります。
夏だからかもしれません。
2014.06.26 Thu
今日は、ちょっとした空き時間に、なつかしい音楽を流していました。
ヨーグルのサントラ盤です。
久しぶりに聴いていて、ものすごーく「夏」だなって感じました。
ちょうど、いまくらいの季節だったというのもあるんですよね、
ヨーグル始めたのも。まあ何年も経っていますが。なつかしいな。
普段は、思い出しているのか、忘れているのか、正直よく分からないのですよ。
瞬間的に思い浮かんだりすることは、決して少なくないと思うのですが、
まあ、通り過ぎる電車を見送るような感覚ですね。
感傷にひたる間もない一瞬の出来事、そんな感じです。
さーてと!
2014.04.04 Fri
白でした。
バーチャル、な。
2014.03.30 Sun
雨が降っています。しとしとしと。雪に染み込んでいきますね。
2014.03.15 Sat
水滴の音が聞こえています。
2013.11.24 Sun
冬ですね、いよいよ。
寒いヽ('▽'*)ノ
寒い('▽'*)
隙間風がビュー
入ってきます。
夏は涼しくて良かったんですけどね、隙間風。
越冬のために防寒材を壁に貼り付ける作業が始まります。
ところで、
東京駅の工事は完成したようですが、
ミレナリオは復活するのかしら。
ふと。
2013.10.24 Thu
たぶん、すぐ、そこ。
そんな場所。
2013.10.23 Wed
思い出すこともあります。
ああ、でも今は今なんですよね。
途切れることなく続いていますが、
なんていうのか、
ふとした瞬間に、
あらって思ったりします。
秋の静寂]▽'*)
2013.09.29 Sun
夏の間に、やろうとしてやれなかったこととか、あるんですけどね。
もう秋です。
今年の夏は、おしまい。
未練は、ありません。
次いきましょ。
秋から冬は、早いです。
さむいのは苦手だけど、服を楽しむには最高の季節ですからね。
来週から越冬です。
また、いつの日かヽ('▽'*)ノ
2013.08.14 Wed
水の流れを目で追いかけていると、
あ、
夏が終わりに向かっている、
そんな気分になりました。
まだまだ暑い日が続きそうですが、
確実に「夏の終わり」のムードが、
その流れには漂っているのですよ。
次の季節、すぐ、そこ。
2013.07.14 Sun
毎日、暑いですね。
いかがお過ごしでしょうか。
こちらも暑いです。
ふだん暮らしている住まいから移動して、
夏の間だけは避暑ってます。
こんな暮らし方も、なんだかんだで四年です。
五年目、といったほうがいいのかもしれませんし、
べつにどうでもいいことですよねって気もしちゃいますし。
いろいろメモしておこうと思っていることは多いのですが、
最近はウェブよりも「紙」に書いています。
いつか再び自分専用のパソコンがほしいとは思っていますけど、
優先順位は低いかなあ。
借り物で七代目になるかしら。
いま目の前にあるのも、借り物です。
パソコンに限らず、ありとあらゆるものが。
四年間、いろいろと吸収したことも多いと思います。
でもまだまだ何か、吸収し足りていないものがあるのかもしれません。
そろそろいいかな、っていう気分にならないので。
まだまだしばらくは、再スタートにすら到達しませんね。
それでは、ごきげんよう。
2013.06.02 Sun
六月ですね。
暇な時にでも、
って思っていると、
時間が素通りしちゃってく感じです。
暇とか余裕とか関係なく時間作れば良いのでしょうけど、
また思いついたときにでも。
2013.05.12 Sun
梅雨が来る前に屋根のリフォームが終わったので、かなり安心。
です(*゜▽゜)ノ
雨漏り、やだあ。
2013.04.10 Wed
めっせ。
正確には、Windows Live Messenger、ですっけ。
ヨーグルを始めた年の暮れ頃かしら。
ね、登録したの。
学園生活の大半は、メッセとも同時進行だったのですよね。
いろいろと。
ヨーグルにログインしながらメッセでも、なんてことが日常でした。
パソコンを手放す事になったり、引っ越したりで、メッセにログインしない時間が増えていましたが、
ついにこの春で、そのサービスそのものが終了したということなんですよね。
思い返せば、
卒業後も、
思いがけないタイミングでメッセでお話したりしたことも、
多かったんですけどね。
時の経過。
またひとつ、もう戻る事のない、あの景色、あの感触。
スカイプへの移行は、時間に余裕のあるときにでも。
ごきげんよう(*゜▽゜)ノ
2013.04.01 Mon
いつもと同じように感じますか。
なにかが違って感じられますか。
今日から新しい制服です。
緊張感で息苦しくなるくらいが、
あんがい、ちょうどいいんです。
大丈夫よ。呼吸すぐに整えますから。
開店直前の空気。
今日だけの空気。
あとにも先にも、
本当に一回限りの、
空気。
そうですねえ、
まずは淹れたてのコーヒーなど、いかがです?
豆は、カフェ日々草の。
水は、あの温泉から。
門扉に飾るプランターは、この冬を乗り越えた日々草です。
またのお越しを、お待ちしております。
2013.03.19 Tue
自分なりのラッキーカラーって、ありますよね?
思い込みでも構わないのです。
この春から、ラッキーカラーを意識的に飾るようにしています。
パソコンの横、とか。
いつか書こうと思っていたことも、あったと思うんですけどね。
今となっては、どこか遠く遠くに感じてしまいます。
思い出すのが切ないのではなくて、
言葉とか文章とかにするのが、切ないというか、
や、違うな、
なんだか、もどかしいかなって。
もどかしい。
チャットで、だらだらとおしゃべりしていた頃が懐かしくもあります。
環境が変化した、というのも要因の一つですが、
自分専用のパソコンが欲しいっていう強い気持ちが失われているのが大きいです。
パソコンは事務や記録や、実に日常的で、家事的な使われ方のなかに置かれていて。
ゲームやらアミューズメントやらアメニティな分野からは離れています。
まあ自然にしています。
なにかをきっけに変化する事もあるかもしれませんし。
ね。
強く熱い情熱が、たしかに、ありました。
あれは、いったい、なんだったのでしょう。
ヨーグルティングの、うちわ。
パタパタと、あおぎながら。
あの夏に始まった日々。
情熱の席には、たぶん別のかたが座られていますよ。
たぶんね。
いつか、どこかで。
そんなふうに言い合っていた頃ですら、
遠くもあり、こないだのようでもあり。
ツイッターでは、ぽつりぽつり。つぶやいています。
着実に時間が経過中。それは確かです。
ごきげんよう。
2013.02.08 Fri
自分が意図する方向へ、なんとなく足の向くままに進んでみると、絶句。
そんなことの、繰り返し。
すべに意味があるのだからと、理由や根拠を探そうとするけれど、途中で飽きて絶叫。
叫び始めたつもりが、いつのまにか歌っている。
そして春は来るのです、去るのです、いいえもともと来るのでも去るのでもなく、あるのです。
立っている私、見上げる空の星。
思い出す時は高速です。
思い出しました。
なりたい自分という姿、いつか訪れるであろう未来の自分自身。
高速で収縮しているのです。
あふれかえる星座の数々。
2013.01.12 Sat
「まうりる・ろっと」はフィクションです。実在する団体や人物をモデルにしていますが、あくまでも当事者たちの了解のもとで個人的な想像力の名の下に綴っている物語に過ぎません。正確には、物語の断片なのですが。散らばってしまったビーズを拾い集めているようなものなので、脈略時系列は一切関係ありません。エスティバー学園に入学する前の頃の物語です。
仕事の合間など、空き時間を利用して、ノートに文字を綴っています。
自由にパソコンを使えないし、自分専用のパソコンでもないし、
それならノートでいいやっていうのが本音。
最近はノートへの走り書きが楽しいです。
2013.01.11 Fri
ほんの近況です(*゜▽゜)ノ
2012.11.08 Thu
まあ誰が誰なのか、といったことは、自然と理解できるでしょうから気にしてませんでした。
「とりあえずさあ、来てみてちょうだいよぉ」と彼女が言うので、
「着て見る?」と聞き返して見ました。
なんとなく間が空きましたが、
「それだよそれ!」と彼女は機嫌良さそうに言うのです、
「要するにさあ、同じ趣味の仲間同士ってことになれば、すぐに打ち解けるんだしぃ」と。
「わかったわ、じゃあ次回の集まりとやらに、お邪魔させてもらうわね」
「さっそく連絡しとくからさあ、楽しみにしとていてって。いやまじで!」
いまならコスプレサークルと言えば、理解が早いのでしょうけれども。
ううん、当時もコスプレという言葉は、すっかり浸透していたはずよね。
おそらく私の中に、期待と不安が渦巻いていたのです。
個人的な趣味としての衣装作りです。
まあ着て写真撮ってもらったりすることも、あるには、ありました。
とてもとても限られた人間関係のなかでの、ささやかな戯れです。
同好の人との出会いとなると、なんと言ったら良いのやらという感じです。
「サークルやってるんだよ」と彼女が初めて話し始めた時、
私は「ふうん」と答えただけでした。
興味が無いというよりも、別世界だったのですよ。
彼女とは年齢は近かったのですが、まあ、こちらは学生ではありません。
学校という環境からは、すっかり遠ざかってしまっているのですよ。
同級生が高校生だからといって、別世界には違いないのです。
私が制服を着た時点で、それはもう、まぎれもなくニセモノであり、なんちゃってなのですから。
あの頃の私は、仕事が終わると、その日の気分に合わせて服を選んでいました。
いろいろな制服を着こなしていたわけですが、まあ、なんちゃってです。
もしも『学校どこ?』なんて聞かれてしまったら、答えようがありませんし。
別人になりたいわけでもなく、誰かに憧れてるというわけでもなく、
どこかこう、もっと自分らしいスタイル、というのを模索していたというか。
「ぶっちゃけコスプレやってる子のなかには、服作ったことない子いるんだよね。
だから衣装作れちゃうって時点で欲しいわけなの、うちに。
しかもそのなりでしょ、自分で着ちゃってるていう。
いや。
普段着にしちゃってるって時点で、ツワモノよ。即戦力だわ」
「ごめん・・・言ってること、よく分かんないよ」
「来れば分かるって!」
彼女の自信に満ちた声とオーラが、なんだか眩しくてしかたなかったのですよ。
2012.11.03 Sat
「やっぱりそうだったんですね」
「やっぱり?」と私は聞き返す。
「ええ」と彼女は言う、「そうなんじゃないかなあって。感じました」
「分かるものなんですか」
「ええ」と彼女は言う、「分かっちゃうものなんですよねえ意外と」
#
時間をかけて、わかりあっていくというのも方法の一つ。
でも、最初から、それこそ、ほぼ一瞬に、あれやこれやを見抜いてしまう事もあるわけです。
見抜かれてしまったときに、それを心地よく思えるか、あるいは生理的に嫌悪と感じてしまうか。
「でも重要なのは、ここからです」
彼女の言葉を私は待ったのですよ。その続き、これから語りだすという何かを。
「たぶん」私は会話を試みる、「外れると思うわよ?」
「ええ」と彼女は言う、「それならそれでいいんですよ。だって」
だって?
「当てる事に意味なんてないもの」
私はコーヒーを見下ろします。
それから彼女の、そう、彼女の瞳ではなく、眉間のあたりを、見るのです。
「外れたら外れたで、正解を教えてくださればっ、て、何かついてます?」
「うん」私は答える「もうひとつ、目が」そこにある気がするのですよ。
「おもしろいこと言うのねえ」
それから彼女は私の名前を初めて呼び捨てにしてから、
「じゃあね。もう当てちゃいますからね。いいですか」
と、ひとつの結論を声に出すのですよ。
2012.11.02 Fri
「今度、参加してみない?」
まあ時間の都合がつくのなら、という軽い気持ちで了承していたのですが、
どうも想像していたのとは違う集いだったようなのですよ。
「一応確認。どういうメンツなのかしら」と私は質問してみます。
「例の、あれ。洋館とか出掛けていって、写真とか撮ってきて、っていう。
まあ、サークル仲間みたいな感じかな。気楽な感じだよね、サークルみたいなもんだし」
「サークルじゃないの?」
「なんていうかさあ、あんまり組織としては、しっかりしてないっていうか」
「でも代表者とかいるんでしょ」
「うん。理事長って呼ばれてる」
「理事長」その言葉を私は唱えてみた。
「うん」彼女は続けて言うのです「活動資金を提供しているお嬢様、って感じかな」
「女性、なのね」
「一応」
「一応?」
「うん。理事長は王子さまだからね」
「そういえば聞いてなかったけど、王子は何人くらいいるの」
「王子は、まあ、結構いるよ。でも王子さまは、ひとりだけ」
「理事長」
「うん」
「ところで、この前の話だと」
「うん?」
「たしかオフ会だって、言ってなかったかしら」
「そうだよオフ会だよ」
「オフ会って、そもそもよくわからないのだけど」
「えっ、そこから説明しなきゃなんないの」
「すみませんわね」
「いや、いいんだけど、いいんですよ?」
「一応、言っておきますけど」私は言う「オフ会が何なのかは知ってますよ」
「うん?」
「私が言いたいのはね」
「なんですかねえ?」
「インターネットやってない私が、オフ会に参加しても良いのかと」
「あああ」
「インターネットで知り合った人が、こっちの現実でも会いましょうって。いうのがオ」
「腐会だねえ」
私はインターネットをしていないどころか、自分のパソコンというものを所有していません。
「いやあ、まあ、細かい事は気にしなくても。ねえ?」
「私に聞かないで。聞いてるのは、こっちなんだし」
「じゃあさ。こうしようよ。当日の昼間、会うの。何人かと。で紹介しとくから」
「それはいいけど」
「じゃ決まりね。参加人数に入れちゃっとくよ」
「よろしくおねが」私は少しだけ微妙な感じになりつつも「いします」と言ったのでした。
2012.10.28 Sun
あの約束が果たされたのかどうかは、地層を探しても見つかりませんのよ。
ふと思い出したように魔導書に手をのばしてもね無理なものは無理。
だから絶望なさい、体の芯から細胞の核ごと、本気モードで絶望なさいませ。
だって本物の絶望でなければ、希望の崖は見えないものよ。
まさかそれが希望だなんて思いもしないで、
道はどこ?って嘆いているだけなんだもの。
本物の絶望を宿した愚か者は、道を欲しがるより先に、よじ登り始めるわ、崖を。
ふたたびめぐり遭うまでの遠い約束に必要なのは、未来。
だからもし、あなたが今も心を痛めて苦しんでいるのだとしたら、
それは過去の話ではなく未来に起こってしまったことの、ほんの途中経過かもしれないわ。
もう未来は起こってしまっているの、あなたが望んだとおりに。
理論どおり地の底を目指して掘り進めるならば、
間違いなく空に辿りつけるのでしょうけど、
そんなの無理よ無理なものは無理って、
またしても魔導書に手をのばすのかしら?
いま気づくべきなのは、
本当に空に辿りつきたいのか、
あるいは、
温泉を掘り当てたいだけなのか。
自問自答を終えておかない限り、
あなたは誰の言葉も理解することができないでしょう。
そんなわけですから、
あの約束が果たされたのかどうかは、地層を探しても見つかりませんのよ。
ぎいぃ。
さ。
どうぞ、奥へ。お進みになって。
2012.10.28 Sun
最初の入り口は、どこだったのかなあ。
記憶って、あいまいだから。
よく、わかんなあい。
それでも現在ここにいるってことわ、
まぎれもなく入り口を見つけて入って、進んできたってことだし。
どこだったのか。いつだったのか。
『もうすぐ、良くなるから』
って言葉を頼りに暗闇の中を進む時は、
別に根拠なんかいらないし、
信頼とか信用とか関係ない。
これしかない。それだけの話。
暗闇の中で、頼りにしたあの光は、
本当に光だったかどうかも怪しいのです。
それでも灯台は自らのためではなく航行する船のために、
来る日も来る日もレーザー照射を続けるのです。
ぽーん。
ティーナ・カリーナの歌が聞こえるリビングルームで、
あろっとおぶコーヒーの濃厚なる芳香に包まれながら、
髪。
ずいぶん、のびたわ。
って撫でながら深呼吸するの。
ぽーん。
なんとなくメランコリ、あ、りる。
コーヒーをこぼした人がカウベルを鳴らして出て行ったから、
そろそろかしらねタイミング。
席を立つ前にタブレットをロックして、それから制服に着替えることにします。
繰り返される神無月のループの中で、
たぶん彼は楽しく狩っていることでしょう。
あの広い草原で、
いわし雲が吸い込まれていく苔むすクレパスで、
まさか自分が狩られるなんて夢にも思わず、狩っていることでしょう。
2012.08.02 Thu
パソコンに向かっているとき。
よーぐるの頃は、誰かと、いつも、おしゃべり。
卒業してからも、誰かと、たまーに、おしゃべり。
もしかすると、これからもね、
かなり長く、
こういう関係は続けられるのではないかなと、
思ったり。
パソコンに向かっていると、
最近は内省的な時間も増えていて、
なんとなくだけど、
そろそかなって、
思うときがあります。
そろそろかな、って。
夢のような時間の、その外へ。